カテゴリー「闇の回廊」の9件の記事

咆哮

   咆哮

 



漆黒の闇を

風の音が切り裂く

凍てついた空気の中で

荒ぶる力が動き出す

 



虐げられた怒りと

封じられた憎しみ

そして

見捨てられた悲しみ

 



暗く屈折した感情は

地底のマグマのように

渦巻きうごめき

沈黙の中で時を重ねる

 



それが限界を超えた時

禍々しく黒き力は

敵味方の見境もなく

嵐となって暴れだす

 



魔の咆哮

しかし

作り育てたのは

まぎれもなくヒトだ

 



誰の心にも

どこかに魔は潜む

それを共振させ

大きく育てさせてはならない

 



今はひたすら祈り

心の闇を鎮めよう

より大きな不幸を

自ら呼び込まぬように

 

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詩集《闇の回廊》8

 

   旅路

 

遠い夜の彼方に輝いた

青い炎の中から

あなたは生まれた

 

一五〇億光年の旅の始まりは

銀色の翼を背に羽ばたかせ

一三次元の意思を受け継いで

闇を狩っていた

 

創造と秩序を守り

破壊と暴力を駆逐して

光に溢れた心を

拡がり続ける時空に満たすために 

けれど

駆逐することの中に

暴力と破壊の闇がある事実に

あなたは気付いてしまった

 

光は闇を生み

闇からまた光も生まれる

創造と破壊 秩序と混沌

あなたは銀色の翼を捨てた

 

かわりに

闇よりも黒い翼をつけて

あなたは銀の翼と戦った

そう かつての仲間たちと

 

裏切りの十字架を背負い

光の声に背いて

破壊と混沌の時空を

ひとり彷徨う

 

やがてあなたは知った

光の声の中に響く闇の声を

闇の声もまた

一三次元の意思だということを

 

心に澱むわだかまり

そして愛と憎悪と怒り

あなたは選ばれていたのだ

 

そのすべてを受け入れたとき

あなたの旅は終わる

 

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詩集《闇の回廊》7

 

   血涙

 

鬼になろう

鬼になろう

たとえこの身が炎に焼かれ

永久の闇に落ちるとしても

 

鬼になろう

鬼になろう

針の筵に血飛沫をあげ

苦しみの鎖に繋がれようとも

 

この世にはびこる人間モドキ

人の姿は保っていても

弱者をだまし血を啜り

自分の欲に身を任せ

他人を踏み付け見殺しにして

省みもしない悪魔たち

そんな奴等をぶち殺し

一人残らず滅ぼすために

 

優しい瞳も柔らかな肌も

愛しい人との言葉も夢も

すべてを失いすべてを捨てて

鉄をも引き裂く鋭い爪と

巌を砕く尖った牙と

鋼の皮膚と額の角と

異形の姿の巨大な身体で

人に疎まれ蔑まれても

決して死ねない狂えない

 

鬼になろう

鬼になろう

この世の悪夢を追い払い

地獄に落ちてのたうつために

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詩集《闇の回廊》6

 

   呪雨

 

たたきつける雨粒が

肉を穿ち骨を削る

晒された頭蓋の虚ろな闇に

あなたの無念がこだまする

 

さらわれた日々は

幸福の夢の中

女として人として

ありのままに愛され

与え求め続けた

 

救われた日からは

絶望の牢獄

自由も言葉も感情も

すべてを奪われた

飾りものの人形

 

決して忘れない

救われたあの日を

侵入した勇者は

嘘と暴力で山を汚し

あなたの首を落とした

 

稲妻の荒れ狂う

深夜の河原には

こうべだけのあなた

雨に打たれ太陽に焼かれ

肉は腐れて落ち

骨は割れてひびがいり

あの頃の姿はあとかたもない

 

奪ったのは誰

殺したのは誰

そしてそうさせたのは

 

あなたではない

他の魔物でもない

角も牙も鋭い爪もない

人の顔を持ち人の姿をした

人の心を持たない男たち

 

もう何もいらない

ただあなたのこうべを抱いて

闇の中に消えよう

こめかみに残った

わずかな角をなでながら

 

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詩集《闇の回廊》5

   朔の月影

 

荒ぶる父の血が

細い身体を狂わせる

鉄をも引き裂く爪と牙が伸び

額を割って角が表れる

 

あなた見ないで

近寄らないで

私でなくなる朔の夜

 

月の光が届く夜は

私はヒトでいられるけれど

月が光らぬその晩だけは

異形の身体に引きずられ

私はヒトでいられない

 

血を求めるのは

恨みか罪か

虐げられた父たちの

忘れられない哀しみゆえか

暗い森を彷徨いながら

生け贄探し駆け回る

 

たとえ愛するあなたでも

その晩出会ってしまったならば

狼が獲物を襲うように

追いかけ噛み裂き爪を立て

その命が尽きるまで

私の身体を鎮められない

 

それでも

愛してくれますか

見つめ続けてくれますか

 

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詩集《闇の回廊》4

 

   純愛

そう

裏切ったのはあなた

 

永久の愛を誓いながら

ひとときの命を生きる

里の小娘と浮気をした

 

紅蓮の怒りに燃えた爪は

小娘とあなたを引き裂き

鋭い牙が血をすすり

骨と肉を噛み千切った

 

浮気の代償に

あなたは命を失って

わたしのそばに転がっている

白いしゃれこうべとなって

 

けれど

わたしは決して裏切らない

 

冷たい洞窟の奥で

一日何千回でも

あなたの骨にくちづけしてあげる

 

あなたの愛した額の角が

時の流れのなかで朽ち果てて

人の命よりも長い一生を終えるまで

 

あるいは

槍や太刀を持った人間達が

わたしを殺してしまうその日まで

 

まるで

赤子を抱き上げるように

そっとあなたの骨を胸に抱こう

 

わたしはいつまでも忘れることなく

あなたのことを想っていてあげる

 

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詩集《闇の回廊》3

   瞬間

 

爪が堅い頭蓋を貫き

ぐしゃりとした感触が

指先にとどくと

絶叫が止まった

あと4人

 

考えるよりも早く

右腕が肋骨をへし折り

牙が鎧を噛み破る

あと2人

 

3本の指先から伸びた

尖った爪から飛び散る

滴が一つまた一つ

枯れ草は

鮮やかな赤に染まっていく

 

真紅に染められた

茂みの向こうに

怯えた鹿の親子の瞳が

…だめだ

もう止まらない

 

20年かけて

ようやく5つに割れた

指がまた3つになったとき

30年かけて

やっと消えかけた

角が再び伸びたとき

 

体は

怒りの虜になった

 

童や娘どもを殺戮し

形になりかけた愛を憎悪にした

元凶のすべてを殺し尽くしても

一度火のついた怒りは

もう二度とおさまることはない

 

あとは

目に入った命を奪いつくし

世界中の命か

この体が死に絶えるまで

暴れ続けるしかない

 

殺せ 殺せ

殺してくれ

世界に命が残っているうちに

 

そして

俺の心に

涙が残っているうちに

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詩集《闇の回廊》2

   北の黒おに

 

話して聞かしょかものがたり

遠い昔のみちのくに

双子の黒鬼おったとさ

力じまんの気みじかもので

ひとたび怒れば大あばれ

けれど心ね優しゅうて

けものらみんなに好かれてた

 

ある日1人の若武者と

きれいな姫と妹と

戦に負けて山奥へ

追っ手をのがれ落ちてきた

イカツイ顔の黒鬼に

出会った小さな女の子

たちまち仲良くなったとさ

 

黒鬼たちの助けを借りて

3人暮らす山奥は

貧しいけれど平和な日々で

思わぬ幸せ手にいれた

そんな暮らしをこわしたものは

戦を好む追っ手の荒武者

若武者相手に騙し討ち

姫をさらって行ったとさ

 

知らせを聞いた黒鬼ふたり

急いで姫を追いかけた

山に慣れてる黒鬼たちは

すぐに荒武者に追いついて

じまんの力で大あばれ

2人で姫を助け出す

愛した若武者の死を知った

姫は静かにこう言った

「人間なんかでいたくない

 わたしも鬼にしてください」

 

姫のかたい決意に負けて

黒鬼たちは姫と妹を連れ

さらにけわしい山奥へ

何処へともなく消えたとさ

白ひげジサマが話してくれた

遠い昔のものがたり

おまえが大きくなったときに

チビすけたちに聞かせてやりな

 

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詩集《闇の回廊》1

 

   手紙

 

青くん

君の暮らす山奥にも

春の声はとどいているでしょうか

 

僕は今

村人たちといっしょに

山の斜面を切り開き

新しい畑を作っているところです

 

君と別れ

黒鬼兄弟のところで君と再会してから

もう一〇年が過ぎようとしています

 

僕と君の犯した間違いを

その行動で教え諭してくれた

黒鬼兄弟とカクレ里の子どもたちも

元気でいるでしょうか

 

いや

彼らもきっと今は

たくましい若者や美しい娘になっているよね

黒鬼兄弟とカクレ里の人々と共に

君は

どんな村をつくっているのでしょうか

 

僕の間違いは

心の底から人間を信じられず

気に入られようとこびを売ったことだった

 

そして君も同じように人間を信じず

僕のために悪役を買って出て

僕の前から姿を消した

 

僕たちが再会できたのは

黄鬼のジイサマや黒鬼兄弟と

カクレ里の人たちに出会えたからだと思います

 

君と別れ村に帰ってから一〇年

ようやく僕も黒鬼兄弟とカクレ里の人たちに

追いつけたように思います

 

鬼がすべて乱暴な悪い奴でないように

人間がすべて良い人ばかりではない

だから心を通わせた人たちとだけ

すばらしい村を共に作れば良い

 

黄鬼のジイサマの言葉を

今ようやく

僕自身の口から村の人に語れるようになりました

そして君のことも

 

だから

君の仕事が一段落したら

ぜひ僕たちの村をたずねて下さい

村の人たちと共に君の帰りを待っています

 

いつまでも君の友達

         アカオニ

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