カテゴリー「詩歌・歌詞」の230件の記事

仰げば尊し

 仰げば尊し

 

晩秋の頃一枚の葉書が届く

大学時代の恩師の訃報

先生は六月の半ばに亡くなられ

伊勢の高台にある霊園に

静かに眠っておられるという

 

共通一次試験後の一期生

問題意識も連帯感もない

ワガママでいい加減な私たちを

穏やかにそして辛抱強く

いつも見守ってくれていた

 

英語の原書の講読ゼミで

つい居眠りをしてしまったり

何で日本語訳ではなく難しい原書を と

自分の努力不足を棚に上げて反発したり

必ずしも真面目な学生ではなかった

 

だが

後にその本の訳本を読んで

先生の思いが理解できた

原書に直接接しなければ見えない

そんなことがたくさんあったのだ

 

大学を卒業して働き始め

様々な現場で頭を打ち苦労して

やっとの思いで経験を積み重ね

日常の日々を積み重ねた

 

日常の忙しい日々の中で

みんなで集まろう の声が出ると

先生への連絡役はたいてい私で

都合がつくと参加していただいた

 

退官の話を聞いた時には

その年ではなく翌年に…との希望で

みんなで集まり記念品を贈った

そして昨年は体調不良のため欠席

集まったメンバーはとても残念がった

 

訃報を知って日を調整したが

どうしても都合がつかない

事前に伊勢に住む同期生に案内してもらい

二人で霊園を訪ねて墓前で十字を切った

見下ろせば伊勢の街並みと神宮の森

風はあったが空は青く晴れ渡っていた

 

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懐かしい情景

懐かしい情景

 

夕暮れの国道を

ひとり帰路につく

スピーカーから流れる

懐かしい歌声

それが流行っていたころは

毎日ギターを抱えていた

 

ハーモニックス

ハンマリング

そしてスリーフィンガー

お年玉で買ったギターで

上っ面の羞恥心を含んだ声で

はやり歌を歌う一人の時間

 

それを積み重ねるうちに

ギターの腕も上がり始め

大学に入るころには

サークルの伴奏役の一人となり

卒業前にはギターの腕を買われ

歌声サークルや市民合唱団に

ギターをもって参加した

 

月日は巡り歳を重ね

二つのギターも年に数回触る程度

幹の指も左の指もその動きは鈍く

もはや「人間カラオケ」と呼ばれた頃は

はるか遠くに去って久しい

 

それでも

あの頃の唄を聞いていると

懐かしい時代のことがよみがえる

まだ若かった仲間たちの笑顔や

ほのかな思いや感情や悩みまで

すべての懐かしさが心を温めてくれる

 

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魔女の時間

 魔女の時間

 

(

)

〇◎クリニック

●×美容外科

美魔女にアンチエイジング

TVから流れる美女たちの

薄っぺらな美しさ

 

きれいな魔女に

かわいい魔女

ステキな魔法が

ステップ踏んで

いま軽やかに踊りだす

 

でも本当は

そんなの似合わない

 

赤い月が上がった

真夜中の雲の上

心の闇にうごめきながら

古びた箒が空を行く

 

濁った欲に指を立て

怪しいクスリをかき混ぜて

歪んだ心にひとたらし

滅びの調べを流し込む

 

忘れられ廃れた白魔術

妖しい力が滲みだす

正義と真実を引き裂いて

どんより沈んだ光の中に

魔女の笑いがこだまする

 

あと少しだよ もう少し……

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夜明け前

 夜明け前

 

 

眠れない夜が

 

続いてるここ数日

 

ボクはぼんやりと

 

窓を開けながら

 

群青の夜空を見上げます

 

 

 

夏の星座は西に沈み

 

秋の星が東にのぼります

 

細長く鮮やかな光を放つのは

 

明けの明星でしょうか

 

 

 

やがて群青の空は

 

一層青さを増して

 

星座の輝きを奪い始めます

 

もうすぐ夜が明けるのです

 

 

 

でも

 

心に広がる闇は

 

相変わらず深く強く

 

ボクの奥底に居座り続けて

 

 

 

明けない夜はないと

 

誰かが気軽に言っているし

 

確かに今日も夜が明けるけど

 

ボクの心は置き去りにされたまま

 

 

 

闇の中に惑いながら

 

光を求めることもできないけれど

 

それでもこうして生きているボク

 

暗闇の中で何とかひとり

 

ただぼんやりと生きています

 

 

 

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こ・わ・れ・る

こ・わ・れ・る

 

Windows10のアップデートの後

急にパソコンが不調になった

認証までたどり着けず使用できない

しかたなく近所の詳しい友人に預ける

 
 
 

 

もう一つの7があるからと

軽い気持ちでいたが

翌日7の入ったパソコンも

USBを差し込んでも反応しなくなった
 

実は前からキーボードも

ノートパソコンの本体は壊れていたので

USBから別のキーボードを接続していたため

万事休す 印刷もスキャンも何一つできない
 

 

7月末が締切の同人誌の編集も

プリントの作成や編集も

例会案内の文書の作成や印刷も

ブログやフェイスブックの更新も

書きかけの小説の続きを書くことも

エッセイや詩の推敲も

パソコンが壊れただけで

すべてが完全にストップしている
 

 

と言って

すぐに新しいパソコンを買う余力もない

金を稼ぐ仕事以外のやらなければならないことは

とりあえず何一つ進められない
 

 
 

 

でも

もしかするとこれはチャンスか

とりあえず読めてなかった本を読み

見そこねていたDVDを見よう

壊れたパソコンがくれた

ゆったりとした時間を味わいながら

今夜は

少しだけ早く寝よう

 

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雨の通院

 雨の通院

 

起きる前から続いていた雨の中

母をかかりつけの医者に連れていく

高齢な上に病を抱えているが

それなりに家の周りを動き回っていた

それがこの数日体調が悪い

 

点滴をするということで

一人車の中で終わるのを待つ

ワイパーの止まったフロントガラス

雨粒が落ちては広がり流れていく

道の向こうに見える鎮守の森は

雨に濡れて瑞々しさを増している

 

正午前にようやく点滴は終わり

車に乗せて自宅に連れ帰る

食前の薬が一つ食後が三つ

食べられないかと心配したが

お粥を食べて薬も飲んだようだ

 

昼食を終えて一人部屋に帰る

雨音はまだ

途切れることなく続いている

 

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くもり空

くもり空


夕暮れまでは晴れていた空は

すっかり雲に覆われて

月はもちろん

星の光も見えない

 

どんよりとした雲は

雨の予感を振りまきながら

静かに夜の町を見下ろす

穏やかな春の夜

 

温かな空気が

疲れたボクの心を包み

透明な眠りの世界へと

沈黙の声で誘ってくる

 

このまま

永久の眠りの中に

ひとり落ちていくことが

もしかしたら幸せなのか

 

そんな声の誘惑に

ボクは力なく首を横に振る

 

日々の暮らしは

年々夢を奪っていき

ただ惰性で生きている

そんな風に思える

 

けれど

ちょっとした誰かの微笑みに

希望の光が宿ることがある

それを信じて明日を生きたい

 

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ファンタジームーン

ファンタジームーン

 

庭先の畑に

桜が香り始めたころ

ボクはぼんやりと

夜空を見上げる

 

数か月前の

冷たく尖った空気は

いつの間にか消え去って

星のマタタキも

どこかしらやわらかい

 

こんな夜には

妖精や魔物が

人の目から隠れて

宴会をしているからね

 

小さい頃

おじいちゃんが

そんな話をしてくれたのを

ふと思いだす闇の中

 

今夜は

何となくそれを信じたい

 

西の空で霞んだ月がささやく

現実の狂気に踊っていないで

そろそろこちらにおいで

 

ボクはそっと

左の手首を見つめる

 

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足音

 足音

 

温かな日差しの中

そよ風が頬をくすぐる

黄色の波が揺れる

菜の花畑が広がる

 

まだまだ寒いと

着こんでいた服を脱ぎ

金の鱗のきらめく

海面を眺める

 

堤防には釣り人がちらほら

さすがにモコモコの姿はない

日が翳ると少し寒いが

それでも

手袋やマフラーはいらない

 

やがては弥生月

桜の枝先にも

つぼみが見えている

多少花粉も気になるが

春の足音が近づいている

 

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いい湯だなぁ

 いい湯だなぁ

 

一日の仕事を終えて

ひとり ぽかんと

湯船につかる

 

冬空の外仕事で

凍り付いた指先に

痺れるような感覚が

じんわりと広がる

 

手も足も

こんなに冷え切って

筋肉までも

凍り付いていた

お湯の温かさが

それを教えてくれる

 

じんわりとした感覚を

指先につないだまま

足の指を曲げ

足の指を反らす

痛気持ちいい感覚が

ふくらはぎや太ももを走る

 

向う脛の骨の外側や

硬くなったふくらはぎを

感覚の戻らない指で

強く抑えもみほぐす

少しずつ筋肉が

柔らかさを取り戻す

 

湯船に

熱いお湯を足しながら

静かに目を閉じる

若い頃には味わえなかった

何とも幸せな感覚

 

いい湯だなぁ

 

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