カテゴリー「海邦遥(みくにはるか)詩集」の25件の記事

雨上がり

 雨あがり

 
 

一週間ほど続いた雨は

ようやくひとやすみ

小鳥の声が

庭先から聞こえてくる

 

お日さまを待っていた洗濯物は

庭のあちこちに広がって

ちょっと湿っぽい風に

ふんわりと揺れている

 

雨はそれほど嫌いじゃないけど

一週間も続けば十分かも

久しぶりの日差しに

少しだけ頬がほころびる

 

それでも

灰色の雲はあちこちにあふれ

雨のにおいを運んでくる

夕方はまた雨かもしれない

 

瞳を閉じて

湿気を含んだ空気に指先を伸ばすと

指の間からボクの心が零れる

 

壊れかけた部分が

秋風に溶けていけば

少しだけ楽になるかも知れない

 


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夜明けまで

 夜明けまで

 

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夜明け前の東の空に

オリオンがまたたく

九月の声を聞くと

こんな空に出会える

 

オリオンは

小学生の頃に知った

大好きな星座

その頃は冬にしか見られないと

思い込んでいた

 

夜更かしを覚えて

そうではないことを知ったのは

いつの頃だろう

今よりもずっと傷付きやすく

気まじめだった

 

もう WAKAI とは

言いにくくなった今

あの頃の純粋な気持ちは

どこか濁り淀んで

それを歳のせいにするボクがいる

 

でも

こうして九月のオリオンを見ると

ちょっとだけ

素直で優しい気持ちを思い出す

 

虫の声が聞える星明り

空が群青になる前に

そっと眠りに就こう

 

 

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ファジームーン

 ファジームーン

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気温の下がらない

蒸し暑い真夏の夜空に

ぽっかりと半月がゆらめいて

 

ボクの心のように

薄い雲が輪郭を

あやふやにしている

 

グラスに氷を入れ

今夜の月のような

カクテルを注ぐ

 

ファジーネーブルは

くすんだ光に照らされて

カランコロンと音を立てる

 

昼間の疲れの成果

どんよりと重い身体に

冷たい液体が染み込む

 

それでも

ぼんやりとした心は

覚醒もせず淀んでいる

 

ティーンの頃は持て余した時間が

少しずつスピードを増して

夢を削っていく

 

寝苦しい夜を超えるため

もう一本カクテルを開ける

薄い雲を身にまとった月光が

ボクの魂に絡みつく

 

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菜の花の風景

 菜の花の風景

        

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市内のあちこちで

工事をしている音がする

桜には少し早いが

ようやく温かさが

朝の空気にもやどる

 

ボクは少し窓を開け

車に風を入れる

通り過ぎる窓の向こうで

黄色の波が揺れる

 

そういえば去年も

菜の花は咲いていたかも

 

めったに通ることのない

海沿いの道だが

なぜかしら春ごろに

通ることが多いこの道

 

町並みは少しずつ変わっていくが

菜の花の揺れる一角は

去年も一昨年も

あまり変わらない

 

ボクも

あまり変われないまま

ぽつり ぽつり と

歳を重ねていく

 

仕事に向かう朝のひととき

風に揺れる菜の花が

春の訪れを告げている

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雨の風景

     雨の風景

 
降り続く雨の中
道端の電柱で工事をしている
雨の音に混じるのは
鶯やカラス そして名も知らぬ鳥の声
 
人も車もほとんど通らぬ
静かな田舎道
山や畑の緑も
降り続ける雨に洗われて
瑞々しく光っている
 
そこへ現れた 一匹の犬
首輪していないが
人を恐れる様子もなく
静かに辺りを見回している
 
ボクの視線に気づいたのか
こちらを見て
様子をうかがっている
 
犬は しばらくそうしていたが
やがてもと来た小道を
ゆっくりと戻っていく
 
雨は降り続き
里は穏やかな時間を
ぽつり ぽつり と
重ねていく

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幻の春

幻の春

冷たく暗い空に
シリウスが光る
肌を刺す冷たい風
空気が全身を凍らせる
 
希望の見えない時代に
真実を隠ぺいした
空虚なコトバだけが
マスコミから垂れ流される
 
人の言葉から耳を塞ぎ
軍国色の妄想を押し付け続ければ
対話に絶望した人間は
テロに向かうしかない
 
さくらの季節まで
あとふた月
サイフの中はさびしく
仕事や十分な収入もなく
先の見えない狂気の時代の中で
ボクの心は
正気を保てるだろうか
 
穏やかで平和な春
凍てついた冬空の下で
ボクはそれだけを想い続ける

 

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厳冬

   

厳 冬
 
窓の外
暗い空
空気を切り裂き
風が舞う
 
風はうなる
人を
木々を
土を圧するように
 
ボクは
行き場のない思いを抱えて
ひとりぼっちで
閉じこもる
 
コトバにならない不安
軍靴を轟かせ
死神のラッパが
世情を圧しようと
響き渡る
 
嘘で塗り固められた
毒々しいスピーチ
軽薄な笑い
より弱いものを叩く
ヒステリックな不寛容
 
雪が舞う空に
耳を塞いだまま
ボクの魂が
血を流しながら
静かに凍っていく

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くだける

 

 く だ け る

            

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グラスに入りきらない氷を

アイスピックで

突き刺す

ツキサス 

つきさす
 
 
 
 


砕かれた氷は

掌からこぼれ

グラスに落ちていく

コロン

カラン

キラン

 


砕けて落ちたのは

ボクのココロ

希望の見えない時間に

ひび割れ

落ちて

融け去るだけ

 


ビョーキじみた空元気も

力のない優しさも

ヒトは救えない

自分の中に逃げ込んでも

出口さえ見えない

 


それでも命のエネルギーは

身体の内から滲み出し

観念的な絶望と死に抗う

 


生きなければならない

砕けた心を抱きしめたまま生き続けなければ

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こおる

   こおる

 
灯りの消えた部屋に
冬の寒さが忍び込む
ボクの足は冷たく
外はまだ雪が降り続く

何枚も

布団や毛布を重ねても
身体の震えは止まらない
ひとりぼっちの闇の中
心まで冷えていく

せめて
温めあえるぬくもりがあれば
これほど寒くはないだろうに
別れたあの子の唇が
夢の中で笑っている

しんしんと雪が降り積む
屋根も庭も畑も道も
真っ白なベールに包まれる

冷気が
体中を駆け巡り
心も
ゆっくりと凍り始める

 

 

 

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とける

 とける

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ひとりぼっちの部屋のテーブルに

ぽつんと置かれたグラスがひとつ

ボクは

氷の残ったグラスを見つめ

膝をかかえている

 

残暑は今日も続き

あまり若くもない身体から

エネルギーを奪っていく

人ごみは好きじゃないけど

時には

誰かにそばにいてほしい夜がある

 

カラリ

溶けかけた氷がバランスを失い

グラスの底に崩れ落ちる

今のボクの

あやふやな心がざわめく

 

ココロも

氷のように融けてしまえれば…

 

そんな思いが胸をかすめる

生き続ける限り

ありえないことなのに

 

窓辺から

虫の声が聞こえる

けれども

秋はまだ遠そうだ

 

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