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『化物語』 1~2 を読む

ラックからのミニ評論41


 

化物語1~2《西尾維新&大暮維人》を読む

 

この『化物語』という作品を知ったのは、週刊少年マガジンでの連載が始まってのことだった。マンガの大暮維人は一応知っていたが、以前の作品において絵に魅力は感じてもストリーの面白さが今一つだったため読むのを止めた覚えがあった。だから、連載を読み始めたころはこちらとしても《お試し》の感覚だったのだが、単行本のⅠ巻が出るころにはすっかりはまってしまい、原作小説にも興味が生まれた。続いて、アニメ化や映画化もされていたことを知り、そのDVDも映画版も含めてシリーズで並んでいたものはすべて借りて見た。マンガの単行本を買ってからおよそ数か月で、原作小説の物語シリーズ刊行分二十四冊すべてを買って読みアニメも一気に見るくらいはまってしまった。


化け物や神などの非日常現象は、この物語の中では《怪異》と呼ばれる。登場するキャラの名前も、主人公の阿良々木暦をはじめ、ヒロインの戦場ヶ原ひたぎ、阿良々木暦らを助ける「専門家」の中年のオッサンである忍野メメなど、非常に奇抜なものばかりで、読んでいて強烈な印象を与える。登場するキャラは阿良々木暦と忍野メメ以外は、美女に美少女そしてかわいい小学生といった魅力的な女性キャラクターに彩られ、マンガの大暮維人の画力がそれをさらに引き立たせる。原作小説のアオリには「一〇〇%趣味で書かれた…」という言葉が入っているが、時間軸の前後するわかりにくさをアニメ化やマンガ化がより親しみやすくわかりやすくしてくれている。マンガ化がなければ私自身はこの作品に出合うことはなかったという意味において、マンガ化には感謝したい。


さて、物語の詳細について微に入り細に入り語るのは差し控えたいが、カウンセリングに関わるものとして興味深いのは、主人公の阿良々木暦のキャラである。


阿良々木は、目の前に困っている美女や美少女やかわいらしい幼女が現れると自分の危険や利害を差し置いてとにかく助けようとする。たとえ相手が人類に仇なす伝説の吸血鬼でも他人を信じず近づく者を攻撃しようとするクラスメイトでも人を迷わす【怪異】でもそれはまったく変わらない。その行為によって結果として人類や社会にどれほど迷惑がかかるかを考えることなく、目の前の存在を、自らを犠牲にして助けようと動いてしまうのである。自らを犠牲にする……と言えば聞こえはいいが、逆に言えば、自分を大切にできない、つまり必ずしも自分自身を信頼し、愛することができていないのである。その結果、彼は周囲の専門家や友人たちに多大な迷惑をかける事態につながったりするのだが、それを知ってもなお、阿良々木は目の前の困っている誰かを救おうと動いてしまう。そして、そんな彼を恋人となる戦場ヶ原ひたぎをはじめ友人や怪異の専門家たちも温かく見守っていく。


もちろん、多くの失敗はある。そして彼なりに反省もするのだが、自らの犠牲もいとわずに周りの誰かを救おうと動く阿良々木暦の行動は変わらない。ただ、周りに支えられていく中で、次第に自分嫌いを脱していく傾向は読み取れる。自己評価はなかなか上がらないが、自己否定からの成長は見られる。そんな読み方もできる興味深い作品である。
        
                     〔完〕

 

 【TEXT】

  『化物語』1~2

     作 西尾維新&大暮維人

   二〇一八年    講談社KCDX

 

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