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別れの時間

 別れの時間

 

日付が変わってすぐ義兄が逝った

姉から緊急入院の連絡が入って

六時間あまり経った頃だった

当初は明日の朝もしかすると帰れないかも

という程度で

処置の前には元気に会話していたという

 

二時間あまりしてから連絡を取ると

心肺停止状態で危ないという

急いで隣の市にある日赤病院へと向かった

車の少なくなった夜の道を一人

走る 走る 走る

穏やかで人懐っこい義兄の笑顔が浮かんだ

 

 

病院のベッドに横たわる義兄の顔は

眠っているように穏やかだった

十名あまりの親戚が集まる待合室

姪は幼い娘や夫とともに車で向かっている

けれども甥は最終電車に乗れず始発を待つらしい

 

穏やかで優しく面倒見のいい義兄だった

友人も多く仕事で県内あちこちを走り回り

年末には地元神社の世話役の一人だった

怒った顔や怒鳴り声などほとんど記憶にない

周りから親しまれ愛されていた人だった

 

泣き崩れる妻と娘の横で

一歳半の孫が何もわからずに声を上げる

その声に今にも目を覚ましそうな顔で

静かに横たわってはいたが

その目は二度と開くことはなかった

 

零時四十二分

義兄は静かに妻や娘や孫や親戚に見守られ

六十五年の生涯を閉じた

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