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『日本人の知らない日本語』1~3を読む

ラックからのミニ評論40

 

 

日本人の知らない日本語1~3

 

《蛇蔵&海野凪子》を読む

 

 


数十年ほど前から
一〇年ほど、友人に頼まれて隣の鳥羽市内の日本語教室で、外国人に日本語を教えていたことがあった。もちろん、ボランティアである。国際交流ボランティアの代表を今も続ける友人が、日本語教室を立ち上げる際に当てにされ、当時は時間にも余裕があったため、昼間の教室のリーダー的な感じで関わっていたのである。ところが、この雑誌の印刷を長いことしてもらっている中央印刷さんの方との話で、市の国際交流協会の一員になる流れとなり、この七月からは市内のボランティア日本語教室にも顔を出し始めた。そのため、しばらく本棚の奥にしまってあった日本語の教材を再び取り出すことになり、併せて、この本を再読することとなった。

 
この本は、とある日本語学校で外国人に日本語を教えている《凪子先生》が日本語学校の内外で生徒たちと関わった時の様々なエピソードをマンガにした本で、現在こちらで確認している限りでは4巻まで出ている。ただ4巻は日本での話ではなく、ヨーロッパを中心にした外国でのエピソードをまとめているので、今回は3巻までを取り上げている。

 
日本語教室には、様々な国から、様々な日本語のレベルの人たちが集まる。ただ、ボランティアの教室では、教える側のボランティアの日本語に対する知識不足や教え方に対する技量の不足もみられるが、それでも、和気あいあいとした交流と勉強が続く。一方、日本語学校では、お金を払って学校に通う生徒の要求は切実で、また難易度の高い質問が飛び出すことも少なくない。マンガ作品なので
7おもしろく読めるが、特殊な業界で使う道具の名前や敬語など、一般の日本人では、よく知らなかったり、とっさに説明するのが難しかったりする内容の質問も飛び出す。先生たちも日々勉強だが、マンガ作品として楽しむ私たちにも勉強になる4エピソードが多く、なるほどね……と感心するものもある。ある意味では、楽しみながら改めて日本語を勉強し直すことができる本であるとともに、それぞれ文化差のある外国人との交流の面においても参考になる一冊である。

 
ヤクザ映画や忍者映画、アニメなどで日本を知り、日本にまでやってきたヨーロッパ系の人たち、留学や仕事のために来日し、アルバイトや仕事に追われながらも頑張るアジア系の人たち。文化や生活習慣の違いからくるトラブルや戸惑いも多いだろうけれど、日本語学校の中でなら彼らへの視線は温かい。そして、間違った日本語表現も温かな笑いの中で学生たちの生の教材に変わる。そんなエピソードをマンガにしているので、おもしろいだけでなく、ほのぼのとした読後感が広がっていく。3巻では、凪子先生の体調不良を心配した学生が「頭が悪いのですか」と先生を気遣い、ほかの学生に先生の体調を「気持ち悪い」と説明する。学生の思いが伝わってくる間違いを凪子先生はその都度訂正する。やりとりされる日常会話も勉強なのだ。


また卒業式のシーンでは卒業生たちが花束を持って凪子先生に呼び掛ける。

「大きなお世話になりました」と。

 
正しい日本語であれば「大変お世話になりました」とでも言うところではあるが、正しい日本語表現よりも卒業生たちの深い感謝の気持ちが伝わってくる。

 
こうした感覚は日本語教室で外国人に日本語を教えているため、とてもリアルだ。また、凪子先生の説明は実際の日本語指導の現場で参考になることも多い。だが、何よりも、この本を読んで強く感じるのは、交流の大切さである。これからも、地道な国際交流を続けていきたい、と心から思っている。

              〔完〕

 【TEXT】

  『日本人の知らない日本語』1~3

         作 蛇蔵&海野凪子

   二〇〇九~一二年

    メディアファクトリー

 
ISBN978-4-8401-2673-1

 ISBN978-4-8401-3194-0

ISBN978-4-8401-4354-7

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