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『星野、目をつぶって。』を読む

ラックからのミニ評論37

『星野、目をつぶって。』《永椎晃平》を読む


2016年の少年マガジン新連載マンガで、人気ナンバーワン……の帯に釣られて買ってしまったマンガだが、雑誌連載は毎回読んでいた作品。けれども、それ程人気があるとは考えていなかった。というのは、主要登場人物が皆、「いじめ」の傷を隠しているからである。主人公の小早川は、小学校時、憧れ、仲の良かった【加納くん】という男勝りの女の子がいつの間にかいじめのターゲットになってしまった時、最後の最後で彼女に手を差し伸べられず、とうとう転校という形で失ってしまったことに深く傷つき、周りの他者との表面的な「仲良しごっこ」を否定的なまなざしで眺める高校二年生。彼が密かに憧れていた美術部顧問の弓削先生に頼まれ、引き受けることになったのが、同じクラスの人気者、星野海咲のメイクである。
 
星野はクラスでも人気のあるギャル系のかわいい女の子…と思いきや、実は小学校時代にスポーツが得意だった、というよりも上手すぎたために、周りから孤立した過去を持つ。けれども、中学校に入学した際に幼馴染みだった弓削先生にメイクをしてもらって人気者になり、仲の良い友達もできて高校に通っているが、不器用なためメイクが自分でできず、弓削先生そして小早川に頼っている。ただ、自分が孤立していた過去の体験から、いじめや困っている人を見捨てずに考えなしに突っ走ることが多く、その際に正体を知られないようにメイクを落としジャージ姿で行動する。小早川は弓削先生の後を受けて、突っ走る星野のメイクを直してやることになるのである。


また、小早川と同じ美術部に籍を置く松方いおりは、漫画研究会にも所属しているが、いじめのターゲットになっている。ある日、松方をいじめる加納グループに他の生徒が見て見ぬふりをしたり、面白がったりしている中、星野はメイクを落とし、ジャージ姿で割って入り、キックを食らわせる。星野の優勢に生徒たちが遠巻きにはやし立てたり加納に物やジュースを投げたりする中、メイクが落ちそうになって顔を隠す加納をかばって小早川はプレサーの上着をかけてかばい、言い放つ。

 
「何が元はといえばだ。テメエが正しいみたいに言ってんじゃねぇ
!! …(中略)…どいつもこいつも横目で人の顔色見ることしかしねぇクソ共だ!! …(中略)…何もできてないだぁ!? ああ そうだよ。みんな仲良く「何もしない」ことを選んでるテメエらよりもましだけどな!! テメエらこそ偉そうにガタガタ言う前に誰か一人でも…黙ってドロップキック出来んのかっつってんだよ!!! 」と。

 
この言葉はバレーが大好きで努力を続け先輩たちよりも上手であるがゆえに孤立する添島や野球部のエースで人気者だがLGBTという秘密を持つ高橋の胸を打ち、彼らの自覚と行動を後押しするとともに小早川の存在の大きさを強く意識するきっかけとなる。一方、この事件で孤立しつつも小早川を好きになった加納愛那果、実は彼女こそ、小学校時代に孤立させられた時に小早川が助けることができなかった【加納くん】だったことを知る。加納は孤立させられ転校した時、いじめられないようにするため、いじめる側に回る、という選択をして現在に至ったのだった。


様々な問題を抱えながらも、結局は、他者のために動いてしまう小早川と星野。そして、支えられたからこそ小早川に関わろうとする生徒たち。今後の展開にも目が離せなくなりそうだ。

              〔完〕

 

 【TEXT】

  『星野、目をつぶって。』

      1~4巻

      作  永椎晃平

   2016~17年 

 講談社少年マガジンKC

 

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