« 風の夜 | トップページ | 厳冬 »

『月夜のみみずく』《J・ヨーレン》を読む

ラックからのミニ評論33

『月夜のみみずく』 《J・ヨーレン》を読む


ヨーレンを知ったのは、『水晶の涙』というファンタジー小説だった。この本は、この連載の初期にも取り上げているので、もう、十五年ほど前のことになる。その後、『夢織り女』など、いくつかのファンタジーを買い求めて読みふけったが、日本でもいくつかの絵本が出版されている……ということを知ったのは今年になってからだった。鳥羽子どもの本の会というグループで取り上げられたのがきっかけだったが、回ってきた本の作者にヨーレンの名があったことに驚き、何となく見覚えのある絵の画家の名前にジョン・ショーエンヘルがあったことにも驚いた。彼は、もっとずっと昔に読んだ『はるかなるわがラスカル』〔スターリング・ノース作/日本ではアニメ「あらいぐまラスカル」の原作として有名〕の版画家だったのである。そして、訳者は工藤直子、彼女の詩集『てつがくのライオン』〔理論社〕は愛読書の一冊である。そうした意味において、この本は、まさしく時間を隔てて読むべく巡り合った一冊だと言えるのかもしれない。


ストリーは、一人の女の子が、お父さんに連れられて、月夜の晩に雪の積もった道を通って森に入り、みみずくを見に行く、という、ただそれだけの話である。そして、それ自体は、ヨーレンの夫と娘による実体験が元になっている。けれども、ヨーレンの原詩に工藤直子の訳とショーエルヘルの写実的な絵が見事なハーモニーを奏で、とても印象的な絵本に仕上がっている。一九八九年に偕成社から発行されて以来、四一刷(二〇一四年一二月の時点。一五年に一月に購入した手元の本による)を数える人気もうなずける。


様々な読み方、楽しみ方がある本だが、カウンセリングなども日常的に行っている心理屋の目で読むと、通過儀礼としての一つの儀式的な意味合いも見て取れて興味深い。子どもではあっても、みみずくは自然の生き物である以上、自分の足でみみずくの住む森まで歩ける体力が必要であるし、また、森の中でみみずくに警戒させないように長時間静かにしていられる粘り強い精神力も必要となる。しかし、子どもの方でその条件を満たしたからといって、必ずみみずくに出会えるとは限らない。相手は、人間の希望に関係なく自分勝手に動く動物だからである。だから、出会えないかもしれない可能性も受け入れる心の強さも必要である。それらが揃ってこそ、みみずくに出会える《かもしれない》のである。


そう考えると、今の日本の子どもたちの中には、中学生でも必ずしもそれらを備えているとは限らない子がいる。だからこそ、それにチャレンジできることこそが、子ども自身にとって自らの成長の証でもあるし、それを大人に認めてもらったことが誇りにもなる。精神的な成長を促す、通過儀礼としての儀式的な役割を読み取った所以である。


物語の中では、一緒に行ったとうさんの「ほうーほう ほ・ほ・ほ ほーーーう」のよびかけに応えて、みみずくが姿を見せる。少女にとって、長くも短くも感じる、大切な出会いの一瞬。ショーエンヘルの絵筆が、六ページにわたって、それを見事に描き出している。今時の大人からみれば、たわいもない事かもしれないが、子どもにとって成長に必要な大切な体験というものが確かにある。それを知る大人に支えられ、少女は階段を一つ上った。その感動をより多くの子どもや人々と分かち合えるように、母がペンを握った。これは、そんな絵本なのかもしれない。

                                                   〔完〕

 【TEXT】

  『月夜のみみずく』

    作  ジェイン・ヨーレン

    画  ジョン・ショーエンヘル

    訳  工藤直子

    一九八九年   偕成社

ISBN978-4-03-328300-5

|

« 風の夜 | トップページ | 厳冬 »

コメント

こんにちは。
月夜のみみずく
妄想を掻き立てられました。
メルヘンの世界に惹き込まれそう^^

投稿: アリス | 2015年2月26日 (木) 11時04分

おこしやす。ヨーレンさんのファンタジー小説は一時期読み漁っておりましたが、絵本も何冊が出しておられることを最近知りました。なかなかステキな絵本です。

投稿: TAC | 2015年3月19日 (木) 00時09分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/202908/61089246

この記事へのトラックバック一覧です: 『月夜のみみずく』《J・ヨーレン》を読む:

« 風の夜 | トップページ | 厳冬 »